パーキンソン病
とは
人間の体は、大脳皮質から筋肉に指令が伝わることで動いています。胃が食べたものを消化したり、汗をかいたりする働きも同様です。その際、指令を調節して体の動きをスムーズなものにしているのが神経伝達物質です。そのひとつに「ドパミン」という物質があります。パーキンソン病は、中脳の黒質と呼ばれる部分にあるドパミン神経細胞が壊れ、ドパミンが減ってしまうことによって発症すると考えられています。
ドパミンが減少すると、体をスムーズに動かせなくなったり、震えが起こったりします。ドパミンは通常でも加齢とともに徐々に減少していきますが、パーキンソン病では健康な状態の人より急速にドパミンが減少することが分かっています。その原因は不明な部分が多いのですが、ドパミン細胞の中のαシヌクレインというたんぱく質が蓄積することが関わっていると考えられています。
人間の体を歯車に例えたとき、ドパミンはその歯車にさす潤滑油のような働きをしています。潤滑油がなくなると指令を思った通りに送れなくなり体が固くなってしまうのです。
パーキンソン病の症状としては、「手足が震える」「筋肉が固くなる」「動作が遅くなる」「体のバランスが取れなくなる」という4つの運動症状が代表的なもので、具体的には以下のようなものです。
- 手足が震える(静止時振戦)
- 手足を動かさずにじっとしているときに震えが起きるもので、パーキンソン病の特徴の一つです。特に特徴的なのは指先で丸薬を丸めるような動きが見られることです。パーキンソン病では、片方の手や足のふるえから始まることが多いのですが、高齢でパーキンソン病を発症した場合、震えが目立たない場合もあります。睡眠中に震えは出ませんが、目覚めると再び震えが起こります。
- 筋肉が固くなる(筋強剛)
- パーキンソン病では肩、膝、指などの筋肉が固くなってこわばる「固縮」と呼ばれる症状が現れます。パーキンソン病の固縮の特徴は、「歯車様固縮」と呼ばれるもので、他人が患者様の手首などを持ち、力を入れて肘を伸ばそうとすると、カクカクした抵抗感を感じます。症状が進むと、歩く際にも手足が動かしにくくなり、歩行が困難になる場合もあります。
- 動作が遅くなる(無動)
- パーキンソン病では、歩くときに足が出にくくなるなど、動きが遅くなったり、動きが少なくなったりすることもあります。歩くときのスピードが遅い、寝返りが打てない、といった状況になり、顔の動きが少なくなり、独特の無表情さ(仮面様顔貌)が見られるようにもなります。
- 体のバランスが取れなくなる(姿勢反射障害)
- パーキンソン病が進行すると、体のバランスがとりにくくなり、体が傾いてもとっさに足が出ないなど、転倒しやすくなります。この姿勢反射障害によって、歩行する時は前かがみの姿勢で小刻みに歩くようになってきます。また、歩き始めると早くなって自分で止まれなくなったり、方向転換が難しくなったりします。頸が下がる、体が斜めに傾くといった症状も見られるようになります。
この他、非運動症状として、自律神経障害(便秘や頻尿、低血圧症など)、嗅覚障害、睡眠障害、さらには認知機能障害(もの忘れなど)、精神症状(うつなど)があり、疲労や肩痛・腰痛、体重減少が現れる場合もあります。
パーキンソン病の診断について
パーキンソン病が疑われる特徴的な運動症状や非運動症状などがある場合、それが他の病気によるものではないかどうかを除外していくことで、パーキンソン病を診断していきます。
そのために、問診、診察、CTやMRIなどの脳の画像診断や血液検査を行います。
当院では大学病院などの大病院と協力してアイソトープ検査と呼ばれる脳の状態を細かく評価する検査を委託して検査を進めていきたいと思っています。
アイソトープ検査の一例
パーキンソン病の治療について
パーキンソン病は、現在その原因が完全には判明しておらず、治療は完治に向けてではありません。症状に応じた投薬による加療を行うため、その患者様の症状に応じた調整が必要になります。
治療は基本的に薬の内服による治療行います。薬の種類には、不足したドパミンを補う「L-ドパ」、ドパミンが脳内で分解されるのを防ぐ「MAO-B阻害薬」、ドパミンの分泌を促す「ドパミン遊離促進薬」、ドパミンに代わって作用する「ドパミンアゴニスト」などがあります。
この他にも様々な種類の薬剤があり患者様の状況をみつつ、これらを組み合わせて使用していきます。
薬による治療で効果がみられない場合には、手術療法が行なわれることもあります。手術には、脳の深部に細い電線を挿入し、刺激を送る「脳深部刺激療法(DBS)」や慰労から持続的にL-ドパを投与する「レボドパカルビドパ経腸療法(LCIG)」などがあります。
またパーキンソン病の治療では、関節が固くなったり動かしにくくなったりすることや、バランスをとる能力が低下することを予防するための、運動療法や作業療法などのリハビリテーションも重要になります。入浴やトイレなどの日常生活で必要な動作をなるべく一人でできるようにすること、また日中、横にならず過ごすことで、薬が効いている時間も伸びると考えられているため、薬物療法をより効果的なものにすることを目的として行います。