物忘れがあるかもしれない、これからなるかもしれないと不安な人へ

※「今もの忘れに困っている人」はこちらをご覧ください。

もの忘れとは

もの忘れのイメージ

高齢になってくると、「もの忘れ」という現象がよくみられるようになります。もの忘れ外来は、これらを判別し、不安を解消していくとともに、認知症の疑いがあれば、早期の治療につなげていくという役割をもっています。
日本は現在、そしてこれから超高齢化社会に突入していきます。それとともに、もの忘れも徐々にその患者数を増やしていっています。図の通り、65歳以上の認知症の患者数は現在5-6人に1人の割合で、これでもかなり多い現状ですが、これからその人数割合はどんどん増えていき、2040年には最大4人に1人程度になる推測されています。

健康寿命と平均寿命の推移グラフ
平成29年 高齢社会白書 より
65歳以上の認知症患者数と有病率の将来推計
平成29年 高齢社会白書 より

認知症はまだ完治する治療がなく、症状の進行をゆっくりにするのがやっとという病気です。しかし少しずつ新しい知見、治療方法が見つかってきました。その中には今から自分の素質を確認し予防することでこれからに備えることができるものもあります。

  • 自分のもの忘れが病的なものか確認したい
  • 現在の認知機能・脳の状態を知りたい
  • 将来認知症になってしまうのが心配
  • 認知症にならないために何をすればいいか

このような不安をお持ちの方は、外来でぜひ相談ください。

もの忘れのイメージ

当院では日本認知症学会の認知症専門医・指導医である院長が、その不安を少しでも取り除けるように一つひとつ対応していきます。

もの忘れには、以下のような段階があります

【良性健忘】(自覚的なもの忘れ)
加齢による「もの忘れ」で、本人に「最近もの忘れが多いな」と自覚があり、認知機能の検査でも正常範囲内で、誰にでも起こる心配のいらないものです。
【軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)】
認知機能検査では、軽度の認知機能低下(記憶、決定、理由づけ、実行などの認知機能のうちの1つに問題がある状態)と診断されますが、「もの忘れ」があっても、本人にその自覚があり、日常生活に問題もなく、認知症ではない状態のものです。
【認知症】
本人にもの忘れの自覚がなく、記憶力や判断力・注意力などの脳の機能が低下し、時間や場所、人などを認識する能力なども低下して、日常生活に支障がある状態です。これまで普通に生活の中でできていたことができなくなってしまいます。
診察をするイメージ

もの忘れがあるからと言って、認知症となるわけではありませんが、軽度認知障害の場合、放置していると、年間で5~15%の方が認知症を発症するといわれています。逆に軽度認知障害の段階で発見された場合、年間16~41%の方が正常な老化の状態に戻るとされています。もの忘れが気になりましたら、お早めにもの忘れ外来を受診することをお勧めします。

もの忘れ外来受診の際の流れ

もの忘れの状態を知るには、次のような診察、検査を行います。

問診

問診のイメージ

気になっている症状、生活面で困っていること、体の健康状態、持病についてなど、患者様に寄り添いながら、丁寧に伺っていきます。また、必要によってはご家族に付き添っていただくことも大切で、患者さまご本人の承諾を得つつ、ご家族からの情報も伺っていきます。

一般検査

一般検査のイメージ

血液検査や尿検査、心電図検査、胸部X線撮影などを提案します。特に糖尿病や高血圧症や脂質異常症などの生活習慣病は、脳血管に障害をもたらしやすく認知症のリスクを高める危険因子といわれています。身体検査をすることで危険因子を見極めることが可能です。

認知機能検査

認知機能検査のイメージ

脳機能を客観的に評価するテストとして、認知機能検査を行います。これは認知症の患者様に定期的に行う検査で言語・思考・認知・記憶・行為・注意の項目を念頭におきながら評価していくものです。

脳ドック

脳ドックのイメージ

当院ではご希望により頭部CT、MRI、頸動脈超音波、APOE遺伝子検査、MCIスクリーニング検査を行うことで現在~将来にかけての認知症発症リスクを評価することも行っています。

※APOE遺伝子検査

APOE遺伝子検査のイメージ

アルツハイマー型認知症は、アミロイドベータ(Aβ)という老廃物が脳に蓄積することが原因とされています。Aβは神経細胞に障害を与え、認知機能障害などの問題が生じます。
この蓄積にかかわる物質がアポリポタンパク質E(APOE)で、このタンパク質は一人ひとりの遺伝学的な情報により構成され、それには複数のタイプがあることがわかっています。

主にイプシロン(ε)2、ε3、ε4の3種類があり、両親からの遺伝によりε2/ε4など2つ1組の情報が一人一人に構成されています。
この中でε4型を持つ組(患者様)は持たない組(患者様)と比べて3~12倍ほどアルツハイマー型認知症の発症リスクが上がるとされています。

遺伝子型 リスク(倍)
ε2/ε3 0.6
ε3/ε3 1.0
ε2/ε4、ε3/ε4 3.2
ε4/ε4 11.6

当院ではこの遺伝子検査を行うことで遺伝子型を確認し、将来の発症リスク、ご血縁の方の発症リスクを推測することができます。

*APOE遺伝子検査は保険適応外です。健康保険は使用できません。
*加齢により変化するものではありませんので、検査は1回で十分です。

※MCIスクリーニング検査

MCIスクリーニング検査のイメージ

前述の通りアルツハイマー型認知症は、Aβという老廃物が脳に蓄積することが原因とされています。
MCIスクリーニング検査はアルツハイマー型認知症の前段階であるMCI(mild cognitive impairment:軽度認知障害)のリスクを確認する検査です。
この検査ではAβを排除する機能を持つ血液中の3つのタンパク質を調べることでそのリスクを4段階で評価します。

*MCIスクリーニング検査は保険適応外です。健康保険は使用できません。

  • 検査結果のご説明は、後日再診していただきお伝えいたします。検査結果に基づき、認知症でないもの忘れと判断される場合は、今後の生活上の注意点、脳のトレーニングや食生活の改善などのアドバイスを行っていきます。
  • 認知症が疑われる場合は、薬物治療や精神療法を行っていきます(参考:認知症のページ)。また再検査を行う場合もあります。さらにご家族への介護に関するアドバイスや、各種手続きなどに関する情報をお伝えしていきます。